日々雑感

歴史は、たんなるトリビア的知識の集成ではない。歴史を学ぶとはどういうことか?

Purveyance - 徴発権

イングランドの王様には、中世から徴発権なる大権があった。
国王大権Prerogativeのなかのひとつともいえるかな。

例えば、どこそこに行幸しよう。領地を見て回ろう。
そのときの移動に使う荷車、宿泊地での食糧、これを庶民から調達するのである。



現代風に再現してみよう。

〜ある肉屋にて〜
「主人はおるかぁ」
「これはこれはお役人様。どんな御用で」
「陛下が松坂牛3kgご所望じゃ」
「へへーっ。で、グラム2500円で、7万5000円になりますが」
「ナニゆうとんねんワレ。王室では牛肉はグラム50円と決められとるんじゃ」
「そ、そんな殺生な」
「見てみんかい。これが陛下の令状や」
reijo.jpg


「そんなん言わはっても、わし字読めませんがな」
「キサマ陛下に楯突く気か。そないにロンドン塔入りたいんやな」
「ひぇーっそれはご勘弁を」
「ほな、ええな。はよ肉出さんかい」
「へ、へえ…」
「よしよし。初めからおとなしく従うとればええんや。代金これな」
せんごひゃくえん…


現代からみるとありえない徴発権は、なぜまかり通ったのか。
もともと徴発権は、戦争などで急に入り用になった物資を民間から買い上げる権利としてあったが、値段はずっと同じだった。物価上昇?何それ?おいしいの?状態だった。
その裏には、王室財政がにっちもさっちもいかなくなってきていて、徴発権がないと日々の食事も成り立たない状態にあった事情がある。中世〜近世の財政は、徴発権を前提にしていた。

このような徴発が不人気なのは当然だった。何しろ、いつどこに徴発がクルか分かったものではない。

徴発権を見直す話は何度も議会に出たが、エリザベス期には女王自身の強硬な反対で、ジェームズ1世期には議会がまとまらなかったことで、結局流れてしまった。1610年の「大契約」が根本的解決のチャンスだったが、この改革案は議会・王が両方とも既得権を手放さず、日の目を見なかった。

改革はその場しのぎにとどまり、積もり積もったひずみは1642年に爆発する。

≪ 門外不出の技ホームさくら ≫

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