日々雑感

歴史は、たんなるトリビア的知識の集成ではない。歴史を学ぶとはどういうことか?

女王エリザベス1世のもうひとつの顔

映画「エリザベス」やドラマ「エリザベス1世 〜愛と陰謀の王宮〜」などで知られるエリザベス1世(1558-1603)は、先代のメアリ*1(1553-1558)がカトリックだったこともあって、歴史上プロテスタントのヒロインみたいに描かれる。

エリザベス1世
エリザベス1世。Wikimedia Commonsより。


今回は、エリザベスついて思いついたことを書いてみる。私の憶測が確かならば、宗教政策でも国家財政でも問題を先送りにして三王国戦争(清教徒革命)の原因を作り、さらにその責任をステュアート朝*2(1603〜)になすりつけたのだ。今回注目するのは、1577年に行った聖書解釈集会の解散命令である。


*1 「流血のメアリ」なんてカクテル名にもなった、どちらかというと悪玉役な人。
*2 エリザベス死後、イングランド王位を引き継いだスコットランドの王家。
 くだんの聖書解釈集会とは、聖書について講義するのを一般の人たちが聴けるという集会である。信徒や聖職者のいい教育の場として期待されたが、この集会の講師役の人がピューリタン、つまりかっちりしたプロテスタントだったことが問題の発端だった。中道をゆくエリザベスにとっては、プロテスタントに寄りすぎと映ったのか、聖書解釈集会を禁止した。
 これに反発してイングランド国教会を脱退、独立教会をつくった人びとがいたが、なかでも急先鋒な2名は処刑された。

グリンダル
エドマンド・グリンダル(1519-1583)聖書解釈集会を推進した聖職者。
1577年解任される。Wikimedia Commonsより。


 国教会のカトリック的色合いと、一方こてこてプロテスタントなピューリタンの広がり、この対立は後の課題として残されたわけで、そのうちにっちもさっちもいかなくなって清教徒革命という形で爆発することになる。


 エリザベスはまた、お金を出したがらない、ロコツにいうとケチなことでも有名*3だが、王領地のかなりの部分*4を財政難で売却している。その時は売ったお金でやりすごせるけれど、売った領地からの収入はなくなるわけで、当然次代の王はさらに困ることになる。金に困ったステュアート朝は、課税権を握る議会に強く出られなくなった次第である。いよいよ困ったチャールズ1世が課した船舶税が、革命の起爆剤のひとつになったわけだ。


 根本にかかわる問題を先送りして、人気だけ得たエリザベス。そのツケを払わされて悪役にされた*5ステュアート朝。こんな見かたも、ありかもしれない。ナシかもしれないけど。


以上はあくまで私の憶測です。ちゃんとした情報は、たとえば萩間寅男「ホッブズと英国国教会」(PDF)とか見てください。


*3 一例として、エリザベス救貧法は地方ごとに救貧税をとらせ、それで貧民を養わせる法律で、王室のフトコロは痛まなかった。
*4 どれくらいだったかは忘れました。はい。ヘンリー8世やジェームズ1世とかも売ってたと思う。たぶん。
*5 イングランドとスコットランドの対立を思えば、ステュアート朝がスコットランドの王家だったことも悪役化の背景にありそうです。

≪ さくらホーム続「ローマ人の物語」:歴史書のえらびかた ≫

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